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Family Affair. 幕間〜少女マスター、初陣〜
 体育会系の部活動も終わり、校舎に人気は残っていなかった。
 静まり返った廊下に、わたしの足音だけが大きく響き渡る。

「……これで三つ目ね」

 立ち止まった先の、見覚えの無い図形の呪刻を見て呟いた。
 そして、その魔術師だけに見える赤紫の文字の凶悪さを、徐々に把握し始める。
 ――多分、この結界を張ったヤツは、何も考えていない。
 こうして校舎を一周しただけで、直ぐに他の魔術師に見つかってしまうのが良い証拠だ。
 けれど、この結界自体をくくる技術は、桁違いの物で。
 なるほど。見つかった所で、他人に弄られるような代物では無いという事か。
 ……嫌な予感が脳裏を支配する。
 未知の技術で張られた、凶悪な結界。
 これが、一体どんな効果のある物なのか、それを早く把握しなければ。

「アーチャー、次に行くわよ」

 背後で控える気配に一言告げて、私は再び歩き出した。
 まだ結界の全体像が見えてこないという事は、残りの呪刻がどこかに有るはずだ。
 しかし。

「どうしたの、アーチャー?
 次の階に上がるわよ」

 霊体の姿で控えている英霊に向かって、わたしは声をかけた。
 いくら姿が見えなくても、令呪のラインで繋がっている相手の気配くらいは把握できる。
 わたしの皮肉屋なサーヴァントは、先ほどの呪刻の前から動く様子を見せなかったのだ。

「凛、弓道場を見ろ」
「え?」

 そして、ふいに聞こえた声に、窓の外を覗いた。
 ――その瞬間、雷のような閃光と轟音が響き渡る!

「何よ、アレ!?」

 カギのかかった窓ガラスを抉じ開け、弓道場の方向に身を乗り出した。
 突如、そちらから発せられた閃光と轟音。
 それが収まらぬうちに、黒い影がそこから飛び出してきた。
 咄嗟に魔力を目に通し、その影を追う。

「黒いスーツの女と、それに抱えられてるの――ウチの学ランじゃない!」

 飛び出してきたのは、二人の人間だった。
 黒いスーツの女は魔術師だ。
 穂群原学園の制服をまとった少年を小脇に抱え、人とは思えぬスピードで校外へと駆け抜けていく。

「どういう事!?
 あのスーツの女は、聖杯戦争のマスターなの?
 何でウチの生徒なんか……」
「まだだ、凛!」

 混乱するわたしの耳に、アーチャーの声が響いた。
 そして、視界にもう一つ、黒い影が飛び込んでくる。

「あれは――慎二!?」

 紫色の美しい髪を持った女が、見覚えのある男子生徒を抱え、先ほどの黒スーツが向かった方向へ駆けて行く。
 抱えられていたヤツも意外だったけど、それより――。

「どうやらあの女、サーヴァントのようだな」

 何時の間にか姿を現したアーチャーが、わたしの疑問に的確に回答した。
 灰色の目が、こちらに振り返る。

「追うわよ、アーチャー!」

 言って、駆け出すわたし。
 その肩をアーチャーの無骨な手が掴んだ。

「待て、マスター。
 追ってどうすると言うのだ」
「見たでしょう?
 ウチの生徒が魔術師に攫われてるのよ。
 それを追ったサーヴァントと一緒に居たのは、私の顔見知りだわ」
「だから、それを追ってどうする。
 皆殺しにでもするつもりか?」
「な、何言ってるのよ!?」

 アーチャーのどこまでも冷静な声で、わたしは自分の甘さに気付いた。
 そうだ。追ってどうするつもりだったのだろう。
 一般人の目撃者は消してしまうのが魔術師のセオリーだし、一緒に居た黒スーツも、恐らくは殺さねばならない相手だろう。
 その後を追ったサーヴァントと、その仲間らしい慎二については論外だ。
 だけど、それでも私は――。

「後を追うわよ。
 サーヴァントと一緒に居た男が気になるし、この街の管理者として、あの黒スーツの魔術師を見逃せない。
 殺すか殺さないかは、まず状況を見定めてから判断するわ」
「――そうか。マスターがそこまで言うなら従おう。
 ただ、あまり気が進まないな。
 悪い予感がする」
「何よ、怖気づいたの?」
「たわけ。
 私を怒らせたいのか、君は」

 短く軽口を叩き合って、私たちは駆け出した。

 気を引き締めて、頭を切り替えなきゃ。
 さよなら、穂群原学園の優等生だった、わたし。

 遠坂の名を賭けた戦いは、大きな背中を持つ目の前の男を呼び出した時から、すでに始まっているのだから。





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