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Family Affair. 幕間〜剣の騎士〜
 呼び出せ! 呼び出せ! 呼び出せ!
 熱い血潮を搾り出し、彼方に繋がる魔方陣を満たせ!
 呪文は要らない。印も要らない。
 ただ、己の内に深く根付いた”幻想”をイメージしろ!
 手を伸ばし、そして引き抜け!
 そこにお前の武器が在る!

   *

 焼き尽くさんばかりの輝かしい光が、辺り一面を包み込んだ。
 黄昏の丘から身体が引き上げられ、同時に四肢は修復されていく。
 魂は、溢れんばかりの魔力で満たされ、混沌としていた意識は、霧が晴れるかのようにクリアになっていった。
 もう一度、この世に産み落とされるかのような感覚。
 この身を支配していた絶望が、曙光のごとき希望で心の奥底に追いやられる。
 次は、次こそは――。
 無念に沈む気持ちを押さえつけ、機会の到来に心を奮い立たせた。
 光が収まっていく。
 やがて、立ち上がる事すら叶わなかった両足は、しっかりと大地を踏みしめた。
 徐々に現れる、見覚えのある風景。
 青白い月光が、弱々しく周囲を映し出す。
 そして――

「貴様、何をしている!」

 目の前で、魔力の篭った手刀を振り下ろそうとしている魔術師の女を見つけ、私は咄嗟に不可視の剣で切りつけた。
 女は驚いたように身を翻し、後方へと距離を取る。
 私は、その間合いに一歩踏み込むと、横目で魔術師が手刀を落とそうとしていた”モノ”を確認した。
 胸に拳大の穴を開け、その穴と口から、大量の血液を吐き出している少年。
 ――どうやら、彼が私のマスターのようだ。
 鳶色の目を見開き、虚空を見つめている少年の様は、まるで絶命した瞬間のようにも見える。
 だが、彼の命の灯火は、どうやらまだ消えてはいないらしい。
 ひゅうひゅうと隙間風のような音を立てながら、ゆっくりと胸を上下させ、弱々しく呼吸を繰り返している。
 しかし、胸が動くたびに溢れ出す血の量を見る限り、その炎もあと数分も持てば良い方に思えた。

「……」

 視線を上げる。
 前方には、黒衣をまとった魔術師の女が立っている。
 表情の窺えぬその整った顔立ちが、若干青ざめて見えた。

「待て、セイバー。
 私は味方だ」
「戯言を。
 私の目を誤魔化せると思ったか?」

 両手に馴染んだ柄を握りなおし、女の瞳を鋭く射抜く。
 嘘や偽りは一切許さない。
 そう、思い知らせてやるように相対する。

「嘘じゃ無い、本当だ。
 その少年の傷は、私が付けた物では無いし、お前を呼び出す手助けもした」
「――それが本当だとしても、貴様はたった今、その少年に手を出そうとした。
 恐らくは彼の令呪を奪い、私のマスターにでもなろうとしたのだろう?」
「……」

 私の言葉に、魔術師は黙り込む。
 それを肯定と受け取り、さらに一歩前へと踏み出した。
 魔術師の背後は、分厚い壁だ。
 唯一の出口は、私の背後にある。
 彼女には、もはや逃げ道は無かった。

「覚悟は良いか?」

 尋ねながら、剣を構える。
 女が、悔しげに唇を噛んだ。
 もう彼女は、私の間合いの中に居る。
 構えた剣を一振りすれば、それで事は終わりだった。
 ――しかし、その時だ。

「セイ……バー?」

 ふいに何かに足を掴まれ、それと同時に弱々しい声が聞こえてきた。
 振り返ると、どう見ても意識を失っていたはずの少年が、私の足首を掴みながら、こちらを見上げていた。

「か、かのじょ……を、殺すな……」

 一言話す度に、口から夥しい量の血を、ごぼごぼと噴出す。
 その様は、幾たびも潜り抜けてきた戦場でも見たことの無い、異常な光景だった。
 何しろ、彼が失っている血液は、尋常な量では無い。
 穴が開いている胸元からは、まるで火山のマグマのように鮮血が溢れ出し、口元からも、まるで水を吐き出すみたいに血を零している。
 まっとうな人間ならば、とうに死んでいるような怪我を、この少年は負っている筈だ。
 それなのに彼は、私の足首を思いのほか力強く掴んでいた。
 真っ直ぐな、意思の篭った瞳で、私の瞳に必死に語りかけている。

「わ、分かりました。
 これ以上、喋らないで下さい!」

 このままでは、彼は本当に死んでしまう!
 その事に気がつくと、私は少年の手を振り解き、しゃがみ込んで彼の顔を覗いた。
 少年は、そんな私を満足そうに見上げると、不器用に笑って、静かに瞼を閉じる。
 一瞬、息を飲んだけれど、どうやら気を失っただけのようだ。
 見れば、胸元の穴から噴出していた血の量が少なくなっている。
 もう流す血が体内に残っていないのかと思ったけれど、どうやらそれは違うらしい。

「塞がってる――?」

 そう。
 胸に空いていた穴は、少しずつ塞がりつつあるようだった。
 薄紅色の生々しい肉が徐々に盛り上がり、まるでそこだけ別の生き物のように蠢いて、傷を修復している。
 土気色だった顔色の方も、幾分明るくなったように見えた。
 そうだ。彼は、私を呼び出したマスターなのだから、魔術師のはず。
 恐らくは、回復の魔術を使ったのだろう。
 それに安堵の溜息をつくと、私は再び魔術師の女へ向き直った。
 女は、心底驚いたと言うように目を見開いて、少年を見つめている。

「不本意だが、ここはマスターの言葉に従おう。
 今すぐこの場を去れ、魔術師《メイガス》」

 私の言葉に、女は顔をこちらへ向けた。
 不思議そうな表情をして、首を傾げる。

「私を、見逃すと言うのか?」
「甘いとは思うが、仕方あるまい。
 貴様をここに置いておくつもりは無いが、マスターはお前を殺すなと言うのだ。
 それに、どうやら時間が無いようだからな」

 言って、私は扉の方へ振り返った。
 開いたままになっていたそこからは、幽鬼のような不気味な雰囲気を纏った、紫の美しい髪の女が立っているのが見える。
 ――ソレは、サーヴァントだ。
 土蔵から少し離れた場所で立ち尽くし、こちらから出て行くのを待っている。
 恐らくは、ここのような狭い空間では、実力が十分に発揮できないタイプの英霊なのだろう。

「私よりも長くこの場に留まる事は許さん。
 さぁ、早く出て行け」
「殺生な事を言う。
 私を盾にするつもりか?」
「まさか。
 そのように卑怯な真似をするつもりは無い。
 ――無駄口はいいから、早く行け。そら!」

 女は、小さく舌打ちをすると、人とは思えぬスピードで駆け出した。
 魔術師とは言え、人の身である彼女を、他のサーヴァントが待ち構えている場に先に行かせるのは、確かに殺生な話だ。
 しかし、この得体の知れぬ魔術師を、自分のマスターと二人きりにする程、私も迂闊ではない。
 魔術師が飛び出す。
 それに続いて、私も身を低くして土蔵を飛び出した。





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| 長編 SS [Family Affair.] | 21:30 | comments(2) | trackbacks(1) |
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コメント
ついに待っていたセイバーが登場!
これから二人に扶養家族の増えた士郎ファミリーの活躍を楽しみにしています。
| Wize | 2004/05/23 4:39 AM |
これは…ややこしい事になりそうだなあ。セイバーって融通きかないし。
先が楽しみです。

| ... | 2004/05/26 10:50 PM |
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