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Family Affair. 二日目 その1「一夜明けて」
「せ、先輩、どうしてこんな所で寝てるんですか!?」

 突如、混沌とした意識に割り込んできた、聴き慣れた声。
 悲鳴にも似たその響きに、引き上げられるように覚醒する。

「え……あ、桜?」

 声の主を呼びながら、重い瞼をごしごし擦った。
 遠くで、鳥が囀ってる。
 もう、朝――か?
 そう判断して、何時もに増してダルい身体を、無理やり起した。

 俺の目の前に居る彼女――間桐桜は、友人の妹で、学校の後輩でもある女の子だ。
 とある事情でウチに通うようになってから、朝飯や、晩飯を一緒に食ったりする……まぁ、家族のような間柄にある。
 時折、俺が寝坊したりすると、彼女はこうして起こしにきてくれたりするのだけど――。

「ん。おはよう、桜」
「……お、おはようございます、先輩」

 歯切れの悪い、挨拶。
 寝ぼけた頭でも解る位、彼女の様子がおかしい。
 どこか、困っているというか、戸惑っているというか。

「どうした、桜。
 何か――」

 そこまで言って、身体を支える手に、いやに冷たい木の感触がある事に気付いた。
 ……あれ?
 それに違和感を覚えて、ふと考え込む。

 ”せんぱい、どうしてこんな所で寝てるんですか?”

 いや、こんな所って、何時もの土蔵――って、あそこは木の床じゃ無いし、俺の自室は畳だぞ。
 じゃあ、ここはどこなんだ……よ?
 と、そこまで考えて、脳裏に昨夜の光景がフラッシュバックした。
 ――って、う、あ、

「お、俺っ……!」

 ガバっ!
 慌てて立ち上がった。
 そうだ。
 俺、あのまま気絶しちゃって……って事は、ここは玄関か!?
 と、混乱しているところへ、

「キャー! 先輩、その格好!?」
「え、格好!?」

 わたわたわた。
 追い討ちをかけるかの様な彼女の言葉に、とりあえず股間の辺りに手をやる。
 状況が状況だけに、出てちゃいけないモンが飛び出している可能性があるからだ。
 しかし。

「あれ?」

 視線の先には、いつものトランクス(幸いなことに、何も飛び出してはいない)。
 それと、見覚えがあるのだけれど、頭の中の景色とは違う床板。
 それがどうも、玄関とは違うように見えるわけで。

「――桜、ここはどこなんだ?」
「台所です、先輩」

 ――は?
 顔を真っ赤にして俯きながら、それでも答えてくれる桜。
 いや、俯いてる方がトランクスが視野に入るんじゃ無いんですか?
 なんて余計な事を考えながらも、ぐるりと周囲を見回す。
 その景色は、どこをどう見ても、慣れ親しんだ我が家の台所だ。

「何で俺、こんな所で寝てるのさ?」
「――っ、私に聞かないで下さい!」

 もうっ! と、尋ねた相手は頬を膨らませて怒る。
 いや、でも、だな。
 俺にもさっぱりワケが解らないのだけど。
 とりあえず頭を落ち着かせながら、もう一度周囲を見回した。

 ――うん。
 何度見ても、答えは変わらない。
 やっぱりここは、台所だ。
 台所の床に、居間の座布団をいくつか持ってきて、それを敷布団代わりにして寝ていたようである。
 その一端には、丸めた座布団に布巾を巻いた、枕のような物まで置いてあった。
 そういえば、こんな場所に寝ていたにも関わらず、背中も首筋も痛みが無い。
 それらは、立派に寝具としての役目を果たしたようだ。

 ――いや、だけどさ。
 ここにきて、当然の疑問が頭をもたげる。

 昨夜のアレは、夢だったのだろうか?

 いや、むしろそうである方が、真実味があるけれど。
 光景が、感触が――そして何より彼女の姿が、余りにもハッキリと脳裏に残っていて。
 あれが夢の中の出来事だとは、とてもじゃ無いけど考えられなかった。
 その、記憶の行き違いに、思わず首をかしげて。
 視野に入った足元に、紫色の布が落ちているのを見つけた。

「これは――」

 手にしてみると、やはり彼女が纏っていたローブだった。
 どうやら、布団代わりとして、俺の身に掛けてあったようである。
 つまり、だ。
 あの出来事は夢ではなく、この寝床は彼女が用意してくれたもの――なのか?

「……なぁ、桜。
 青っぽい銀髪の、外国人のお姉さんを見なかったか?
 藤ねぇよりも、少し年上の感じの」
「え、いえ……、見てませんけど」

 俺の質問に、桜が訝しげな表情を浮かべつつ答えた。
 うん。その気持ち、解らなくも無い。
 きっと彼女の目には、俺がまだ半分ばかし夢の世界に居るように見えているのだろう。
 ふむ。

「俺、ちょっと着替えてくる。
 ゴメンな、驚かせたみたいで」

 とりあえず、ローブを畳んで小脇に抱えてから、座布団を集めて、それも反対側に抱えた。
 そして、戸惑い気味にこちらを見ている桜に、謝罪の意を伝えておく。
 彼女は、一瞬呆気に取られたような顔をして驚いてから、

「それじゃ私、朝ごはんの用意をしておきますね」

 と、柔らかな笑みを浮かべてくれた。
 いつもなら、その手伝いを申し出る所なんだけど――

「ん。ありがとう」

 俺は、短く礼を言うと、その場を後にする事にした。



「……さて」

 縁側に出て、深呼吸。
 今日は、昨夜の豪雨など見る影も無く、気持ち良いくらいの快晴である。
 座布団は、居間の所定の位置に戻しておいた。
 後はこの紫のローブを、持ち主に謹んでお返しして。
 んでもって、そのままどっかに連れ込んだ後、しこたま質問を投げつけてやるだけだ。
 勿論、一番最初は、彼女の名前を聞くことに決めている。
 本当なら、こっちが名乗った時に、名乗り返してくれるものと思っていたのに。

「む――」

 それを思うと、ついつい眉間に皺が寄る。
 昨日の自分には余裕が無さ過ぎて、彼女の名前を気にすることすら出来なかった。
 そんな己が情けなくって、とてつもない自己嫌悪に陥る。が、しかし。
 しかし、だ。
 いくらこちらに余裕が無かったとはいえ、人の尊厳を無視するかのような――つか、ぶっちゃけ完全に子ども扱いをしてくる彼女の態度には、一言どころか、軽く一時間ぐらい言ってやりたい文句があるわけなのだが。
 だってさ、大体彼女は――

「あらあら、またそんな顔して、どうしたの坊や?」

 ――そうこんな風に、人の態度に難癖つけて、一言、二言暴言を吐いた挙句、それでいて優しい笑顔で笑うのだ。
 その笑顔はとても綺麗なのだけど、どこか子供を見つめる母親めいてるというか、なんというか――って。

「なに――!!!!?」

 予想外の光景に、思わず叫び声を上げてしまった。
 いやだって、これからどうやって探そうか、正直途方にくれていたその相手が、何食わぬ顔をして目の前に立っていたのだ。
 そりゃ驚きもするだろう?
 一方、彼女の方も、俺の大声に驚いたようで、目を見開いてこちらを見ていた。
 その顔には、昨夜の消え去りそうなくらいに弱っていた様子は無く、頬には、健康そうな赤みが差している。
 んで、その姿を見て、一番最初に出た言葉が、

「良かった。
 アンタ、無事だったんだな!」

 ――だったわけで。
 さっきまで溜め込んでいた、苛立ちとか、文句だとか、そういうネガティブな感情が、一気に吹き飛んでいる俺が居た。





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