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Family Affair. 二日目 その3「未熟なる少年」
 居間へと繋がる襖の前に来たところで、後ろからついてくる彼女へと振り返った。
 振り返った俺を、呆れ顔で見ているキャスター。
 彼女の容姿の特徴でもある長い耳は、お願いして、普通の長さに見えるよう、魔術をかけてもらった。

「いいか?
 キャスターは外国人で、親父を訪ねてこの家に来たんだ。
 んで、暫くは家に滞在する事になった――それで良いな?」
「良いも何も、私は霊体になって姿を消してるって言ってるじゃないの。
 そちらの方が魔力の消費も抑えれれるし、余計な騒ぎを起さなくて済むのよ?」

 先ほどから、何度も繰り返したやり取り。
 俺はキャスターを桜たちに紹介すると主張し、彼女は姿を消してやり過ごすと言う。
 いや客観的に見たら、彼女の意見の方が効率が良いとは思うけど。
 それでも俺は、自分の意見を通したい理由がある。

「馬鹿、キャスターは俺の使い魔になったんだろう?
 使い魔って事は、助け合う関係なんだ。だったら、家族って事だろうが。
 家族を家族に紹介しないでどうすんのさ」
「……一度、貴方の頭の中を覗いて見たくなったわ、マスター。
 どうしたらそんな非効率的に物事を考えられるのかしら」

 はぁーと、疲れたようにため息をつくキャスター。
 その表情は、呆れを通り越して諦めに近い。

 ――く、くっそぉ。
 眉間の辺りがピキピキ言ってるのが解る。
 解るけど、ここでさっきみたいに噴火するほど、俺も馬鹿じゃないぞ。多分。
 キャスターが言ってる事は正しい。
 けど、俺も答えが譲れないのだから、ここは落ち着いて、冷静にだな。うん。

「き、キャスターさん。
 少しくらい、俺の言う事を受け入れてくれても良いんじゃないかな〜?」

 などと、笑顔が引きつるのを必死に抑えて、言ってみた。
 その言葉に、ちらりとキャスターが一瞥をくれる。
 しかしその表情は、納得したとか、そういう類のものではなく。

「貴方も少しくらい、人のアドバイスを素直に受け入れたらどうかしら?」

 一歩も引く様子の無い言葉を投げてきたのだ。

「〜〜〜〜〜っ!」

 あぁ〜、腹立つ!
 きっと彼女ほど俺の事を苛立たせるのが上手い人間は、居ないんじゃないか。
 嫌味を言ったかと思えば、笑顔になって。
 笑顔になったと思えば、痛い所をつついてきて。
 その度に翻弄される俺は、一体どうすりゃ良いんだ!?

「あ〜もう、行こう!
 桜の美味い飯が待ってる!」

 バンっ!
 苛立ちに任せて、荒々しい音を立てながら居間の襖を開いた。
 キャスターが逃げ出さないように、その手をぎゅっと強く握って、台所に向かって声をかける。

「桜!
 悪い、もう一人前用意できるかな?」
「――はぁ」

 俺の手を引かれたキャスターは、またも大きく溜息をついた。
 うーくそ、気にしないぞ。
 俺はその溜息に気付かぬ振りをして、ぐいぐいその手を引っ張り、テーブルの横に無理やり座らせる。
 一方桜は、俺の声に気が付くと、

「え、もう一人前ですか?
 少し難しいかも……」

 などと、戸惑い気味に答えながら、盛り付けに入っていたその手を休めて、こちらへと振り返った。

「それより先輩、藤村先生と何かあったんですか?
 さっきから妙に騒がしい――」

 と、両手をエプロンで拭いながら、調理台越しにこちらを覗いた桜が、驚いたように目を見開いて、途中で言葉を止めた。
 その視線は、もちろん俺の隣に座るキャスターへと向けられている。

「あ、この人は、キャスターって言うんだ。
 親父の知り合いで、暫くの間この家に滞在することになったから」
「はぁ……」

 俺の、予め用意したセリフに、桜は戸惑ったように答えた。
 その様子が、今朝の桜とは比にならないくらいに、どこかおかしい。

 ――まずい。やはり急に女の人を泊めると言うのは、常識外れだったろうか。

 背中に冷や汗を垂らしながら、俺は隣のキャスターを肘でつついた。
 口裏を合わせて、彼女に何か言ってもらわないと、この場が収まるように思えない。
 しかし。

「……」

 当のキャスターは、何やら鋭い表情で桜のことを睨みつけていた。
 口元に手をやって、長めの爪を噛んでいる。

「おい、どうしたキャスター?」

 その様子が気になって、彼女の肩に手をかける俺。
 一方キャスターは、そんな俺の手に気が付かないかのように、桜から視線を逸らすことは無かった。

「――あなた」

 震えるように、やっと声を出すキャスター。
 その声に、桜がビクリと怯える。

「その身体――正気なの?」
「――っ!!」

 それはまるで、死刑宣告のようだった。
 キャスターが呟いたその言葉に、桜は顔面を蒼白にして、ガタガタと震え出す。
 その異常な光景に、俺は慌てて口を開いた。

「こ、こら、突然何言ってるんだ、キャスター!
 桜は、全然おかしくないぞ。
 太ってるように見えるのは、胸が大きいからだ。
 本当は全然痩せてるし、うん。もう少し、肉を付けても良いくらいだ」

 言ってる自分で驚くくらい、場違いで、どうしようもない言葉。
 フォローになってるのか――いや、それどころか話題に沿って喋れているのか、という事すら解らない。
 それでも。
 それでも、言わずにいられないくらい、桜は怯えたように顔を引きつらせ、今にも崩れ落ちそうになっていた。
 キャスターは、そこでやっと俺に振り返って、苦虫をかみつぶしたような顔をする。

「違うわよ、士郎くん。そんな外面の話じゃ無いのよ。
 もしかして貴方、気が付いて――」
「やめて!!」

 キャスターの言葉を遮るように、桜が、今までに一度も聞いたことないような声色で叫んだ。
 驚いて、俺もキャスターも彼女に向き直り――そして、言葉を失った。

 だって彼女が。
  桜が。
   ――とても悲しそうに泣いていたのだ。

「……やめて下さい」

 くしゃり。
 桜の細い指が、身につけていたエプロンを握り締める。
 その、様子に。

「――さ、桜?」

 立ち上がって、声をかけた。
 あまりの展開と、彼女のその様子に、頭が混乱してどうにもならない。
 しかし、桜は俺の声に身を震わすと、引きちぎるようにエプロンを投げ捨て、その場から駆け出した。

「桜!? 待てっくれ!」

 慌てて俺も、その後を追いかける。
 しかし不甲斐ないことに、その差はなかなか縮まらなく、玄関で彼女が靴をつっかけていた所で、ようやく追いつく事が出来た。

「待ってくれ、桜!
 いったいどうしたって言うんだ!?」

 腕を掴んで、無理やりこちらを向かせながら、叫ぶ。
 桜はその声に、怯えたように身を怯ませ、俺の顔を見上げる。
 ようやく合わさった、二人の視線。
 しかし桜は、苦しそうに顔を歪めると、消え入りそうなほどに弱々しく、一言呟いた。

「――先輩、ごめんなさい」

 突然の、謝罪。

「え、な、何で謝るんだよ?」

 その言葉に、思わず動揺して。
 掴んでいた手が緩んだ隙に、彼女が俺の腕から抜け出した。
 慌てて手を伸ばした時には既に遅く、その姿が外へと消えていく。
 それを――

「……なんでさ?」

 俺は、追いかけることが出来ない。

 初めて見た、桜の、大切な家族の涙に、心の底から打ちひしがれていて。

 ――あぁ、親父。
 俺、女の子を泣かせちゃったよ。

 情けなく、心の中で愚痴ることしか出来なかったんだ。





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